2014年8月28日木曜日

揺れ動き続ける「自分のやりたいこと」

私はこれまでずっと地域でいろいろな活動をしてきました。『かすたネット』や『ほたるネット』は子どもの臨床ですし,『関西働き方研究所』は産業臨床,『HOTちゃぶ』は学生相談です。あまりにも領域がばらばらで,自分はいったい何に興味があるのかわからず,自分の主軸はいったい何なのか,どこにあるのかはっきりせず,ずっと悩んできました。

それらを「地域臨床」の視点からまとめなおしたのが私の博士論文で,ようやく自分はこれがしたいんだ,こういう分野をやっていきたいんだというのがはっきりして,自分の中で初めて「筋が通った」ように感じ,すっきりしたのをよく覚えています。

ところが,去年あたりから,私の中で再びもやもやとした違和感が出てきました。

去年の学会のシンポジウムでもお話ししたように,私はもともと人付き合いがそんなに得意な方ではありません。「いったいどこが?」とよくつっこまれますが,それは成長した後の私の姿を見てそう言うのだと思います。芯の部分は人見知りで,積極的なコミュニケーションを不得手としている方です(少なくとも私自身はそう感じています)。

「地域臨床」という言葉からは,積極的に人とつながっていくイメージが思い浮かべられやすいようですが,私は人とのつながりを積極的に追い求めていく方でもありません。地域臨床ではよく「つながりづくり」という言葉が出てきますが,私はつながりはつくるものではなく,自然とできていくものだと考えています(話は違いますが,つながりを積極的につくっていく感じのする合コン等に私が行きたくないのはそのあたりが理由です)。

さらに最近,箱庭療法の研究をするようになって,これがまたおもしろい。地域臨床とは異なる領域がおもしろく感じられるようにもなってきました。

そこで,これまで何度も何度も,何百回も自分にしてきた質問を,再び自分自身に問いかける必要が出てきました。「あれ,私って,いったい何がしたいんだっけ?」

最近その答えが出たので,ご報告(?)します。私は支援の場において,専門家・非専門家問わずあらゆる人が,その人自身の持っている力を発揮できるような仕事がしたいのです。かすたネットをはじめとする4つのコミュニティでの支援は,数多くの人々の力なくしては成り立ちません。私は自分の持てる技術を,力を貸してくださる人々がその力を発揮できるようにするために役立てたいのです(パーソンセンタード・コミュニティアプローチ)。また箱庭療法は,箱庭作品を専門家が解釈するのではなく,作品を制作したその人自身が自ら意味を見出していけるようにしたいですし,それが可能となるように自分の専門性を活かしたいのです(体験過程流箱庭療法)。

私は「専門家だからできること」よりも「その人だからできること」に興味があります。「その人だからできること」が開花するにはどのようにすればよいのかを,私はずっと追いかけ続けてきているのです。

この度おもしろかったのは,ずっともやもやしていたところから「自分がやりたいことは地域臨床だ,これを一生追いかけていくんだ」と答えを出してようやくすっきりしたにもかかわらず,また「もやもや」に戻って悩み続け,新たな答えに至ったことです。多分一生悩み続けるんだろうなと思っています。まさに「あなた自身の『おもしろいこと』は,常に揺れ動き続ける」ですね。